2012年7月13日金曜日

98才、吉田秀和の遺稿


音楽評論家(文化勲章受章)、吉田秀和が死去した時、朝日新聞が一面トップ、文化欄、社会面で詳しく報じた。

しかし、追悼記事の圧巻はなんといっても「レコード芸術」7月号(音楽の友社)”追悼特集・吉田秀和”である。
死の前日(5月21日)、編集担当が鎌倉のご自宅に原稿をとりに行ったのだという。その時の先生とのやりとり、そして、渡された手書きの原稿(写真)を見ると、吉田は死の前日まで矍鑠としていた事がわかる。
吉田の手書きの原稿を見ると、文字自体が楷書で美しく流れるようだ。しかも修正箇所があると、文字数がオーバーしないように次の行で調整している。これらの作業は瞬時に行なわれ、次に書き進む。一気に書かれたものだと推察される。98才、しかも死を間近にした人間が書いたものとは思えない。

原稿の内容は「神のヴァイオリン弾き」とうハイフェッツのDVDを見た感想から始まる。一般的に演奏者を評する時、演奏解釈、演奏技術が論じられるが、ハイフェッツは別次元の奏者だというのである。彼の場合、その発する音だけで聴き手を魅了した「ある絶対的なもの」だというのである。

この原稿を読み終わった後、思わずハイフェッツのCDを取り出し、久しぶりに絶対的なものを味わった。


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