納涼会で私との再会を心待ちにしていたという技術者の一人が石田俊彦さんだった。「畠山さん。見て下さい」石田さんは古ぼけた青焼きのカセットハーフの図面をとりだした。昭和46年(1971)に作成されたカセットハーフと、石田さんが書き起こしたMA-R(1985発売) のハーフ(開発名HX)のアイディア図面(下)だった。
石田さんはカセットテープからオープンテープ並みの音質を引き出すためには、テープ走行の安定性が大事、そのためにはハーフ本体を金属にするという大胆な発想をする。金属フレームはカメラボデーに使われている亜鉛ダイキャストを採用、テープ走行を可視化するために半導体プロセスに使用されているシリコン塗布技術を使用した透明シートを開発。TDKカセットのみならず、世界のカセットテープのシンボル商品ともいえる「MA-R」の開発を成し遂げる。石田さんは「当時は各自それぞれの分野でベストを尽くし、お互いに共振して大きなな成果を上げましたね」。と結ぶ。
音楽や音響学の専門家でもない私が商品企画という立場で10年間、仕事ができたのも石田さんはじめ千曲川工場の皆さんの支えがあったからだということを身に沁みて感じた。私は定年後もTDKカセットテープの広報(ボランティア)をやらさせていただいているが、これも千曲川の皆さんのお陰である。
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