知人の小金郁三(いくみ)さんが「アメリカへの旅、ヨーロッパの旅」(百年書房)という本を出版した。小金さんが父の書棚に、父の叔父である小金義照が書いた「アメリカへの旅」「ヨーロッパの旅」があるのを発見。これを復刻したのである。義照は明治31年(1898)神奈川県足柄上郡開成町に生まれた。1922年、東京帝国大学法学部卒業。農商務省に入省。後政治家となり郵政大臣となる。
著書は官命を受けて1934年(昭和9)、船で米国に渡り主要都市を視察。続いてヨーロッパ主要都市を視察した模様を描写したものである。1934年というと3年前には満州事変、前年には国際連盟脱退。第二次世界大戦に向けての時代である。ドイツではヒットラー率いるナチスが権勢を奮っていた。つまり、日本国ここにありに燃えていた時代であり、その国の官僚としての豊穣の旅である。各国の政治・経済事情だけでなく生活、食文化まで描写されている。
「欧州でも、イギリス婦人は重厚味を感じさせる。ドイツには美人が少ないように思えた。特に、ビールを飲んだ女は腰が太すぎて美しいよりも逞しさが感ぜられる。パリジェンヌは概して腰が細い。パリは、やはり、世界第一、女の美しい都であろう」
義照の写真を見るとハンサムである。海外でももてたのではないだろうか。各都市には東大出身の官僚や商社マンが常駐し、義照をシッカリとフォローしている様子が描かれている。
義照はTDKを創立した齋藤憲三の後任として、衆議院科学技術振興対策特別委員長となるが、憲三は早稲田、その人脈は東大卒の義照に遠く及ばないと感じた。
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