(「鮎瀬番楽」のCD。絵はイメージ。鳥海町のものを借用)
幼少の頃、お盆になると実家の隣、庵寺の広場に仮設の舞台が作られ、ここで「番楽」(ばんがく)が踊られた。獅子舞とも言った。
笛、太鼓、鉦(かね)による囃子(はやし)に乗って、獅子や武士などが勇壮に舞う。囃子方も舞い方も総て部落の若者である。一節によると、番楽に出演できるのは長男に限られていたともいう。
当時、農業は日本の基幹産業であり、農家の長男は自信と誇りに溢れていた。番楽は彼等の晴れ舞台であった。私の兄も幼少の頃から舞っていた。
番楽には部落だけではなく、近隣の若衆もかけつた。若衆同志の出会いの場でもあった。「番楽のできない男には嫁が来ない」ともいわれていた。
「番楽」は東北地方で伝承されている山伏神楽の一種で、350~400年前に生まれた。山伏達が権現である獅子頭をまわして村々を巡り歩き、息災延命、悪魔払いの祈祷を行った。それが村に定着し、古事や歴史物語も取り組んで演劇的なものに発展した。
2日、秋田の実家に行った時、兄から「鮎瀬番楽」の囃子をCDにしてくれという依頼を受けた。渡されたのはカセットテープ。昭和46年(1971)年収録とある。41年前である。再生してみると、解説が入っている。秋田訛りがないので兄に解説者を尋ねた所、「俺だよ」とのこと。当時兄は30歳。張り切っていたんだな・・・。音は大分劣化していたが、懐かしい活気に溢れた囃子が聴こえてきた。村の若者達の名演奏である。
秋田県内には無形文化財の指定を受けて残っている「番楽」が13もあるという。「鮎瀬番楽」の復活を期待したい。
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