(自分の子供の頭上のリンゴを狙うテル)
ロッシーニの作曲したオペラ「ウィリアム・テル」は序曲が有名。
後半の”嵐”に続く”行進曲”はクラシックファンならずとも知っている。
ところが、このオペラが日本で上演されることはほとんど皆無である。日本で初演されたのは1983年。1829年パリで世界初演されてから実に154年後である。
なぜ、序曲が有名なのに本編が上演されないのか?
本編がよっぽどの駄作なのか?
今回、DVDでオペラの全曲をみて、その謎が解けた。
まず、上演時間が4時間と長い。休憩を入れると5時間以上になってしまうのだ。
しかし、作品は実に素晴らしい。
内容はスイスの独立とウィリアム・テル伝説によるもので、歴史叙事詩的である。音楽はヴェルディの作品のように、アリアも重唱も合唱もオーケストレーションも実に素晴らしい。4時間があっという間に過ぎてしまう。
ロッシーニというと「セヴィリアの理髪師」のような早口で歌うアリアのある軽妙な作品が多いが、テルは重厚なグランドオペラであり、改めてロッシーニの天才ぶりに驚いた。
ちなみに、ロッシーニはヴェルディの先輩であり、ヴェルディの傑作オペラの源泉は「ウィリアム・テル」にあるのではないかと思ったほどである。
テルが自分の子供の頭に載ったリンゴを射る場面もみごとで、どういう仕掛けになっているのか、何回も繰り返してみたほどである。
このDVD1988年、イタリアのミラノ・スカラ座で上演されたものを収録したもので、指揮は音楽監督のリッカルド・ムーティ。歌手陣、演出も素晴らしい。
0 件のコメント:
コメントを投稿