2023年7月16日日曜日

八木節を世界に広めた巨匠。外山雄三逝く

7月14日の新聞に「戦後日本を代表する指揮者・作曲家として知られた外山雄三さんが11日、慢性肝臓病のため長野県の自宅で死去した。92歳だった」という記事が掲載された。                                             
外山雄三(1931~1923)といえば、岩城宏之(1932~2006)、小澤征爾(1935~)と並んで戦後日本のクラシック音楽界を牽引した巨匠として馴染み深いが、一般の方の認知度は低いと思う。                                        
 外山雄三を語る時、忘れてならないのは1960年(昭和35)のNHK交響楽団の世界一周演奏旅行である。戦後15年、NHK交響楽団の母体であるNHK開局35周年を記念して、インドを皮切りにソ連、ヨーロッパ、アメリカの12ヶ国、23都市での演奏旅行を行った。オーケストラによる地球一周の演奏旅行はカラヤン・ウィーンフィルに継ぐ史上2番目の快挙だった。当時、外国に行くというのは大変なことであり「もう日本へ帰ってこれないのではないか」と悲壮な決意をした楽員もいたという。                        
 この演奏旅行の指揮を任されたのが若干29歳の外山と28歳の岩城だった。外山はこの演奏旅行のために、アンコール曲として、急遽「管弦楽のためのラプソディ」を作曲した。この曲は「炭鉱節」「ソーラン節」「八木節」をモチーフにした曲だった。大太鼓、小太鼓、チャンチキなどあらゆる打楽器を駆使した日本民謡が演奏されると、どこの会場でも観衆は総立ちになり熱狂した。「フジヤマ、ゲイシャ」しか知られていなかった外国に日本文化の一端を実感させる演奏旅行となった。                          
 晩年は作曲のかたわら、大阪交響楽団を指揮した。ベートーヴェン、ブラームス、チャイコフスキーの交響曲を指揮した。偶然であるが、私の友人である乙黒正昭さんが録音を担当した。2019年大阪・シンフォニーホールで米寿を迎えた外山先生の「第9」を聴いた。立ったままの堂々たる指揮ぶりだった。                             

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