2023年7月11日火曜日

先輩(91才)の証言。カセット事業草創期

カセットテープでトップメーカーだったTDKに勤務していた私に度々取材がある。定年後も会社や社会のお役にたてるのはありがたい。カセットテープに感謝である。
7月6日、これまでにない「テーマ」の取材があった。そのテーマとは「カセットテープ事業草創期」。日本でカセットテープの生産が始まったのは1966年(昭和41)。私がカセットテープ事業に携わったのは1968年からなので私では対応できない。対応したとしても、先輩からの伝聞になってしまう。
当時テープ事業で活躍されていた方々はほとんどが亡くなられている。ただ、一人、T氏は健在だとう確信があった。
私はT氏に電話を入れた。電話口にでたT氏はお元気だった。
「カセットのことなら君が対応するのが一番いいと思うよ」
「でも先輩、昭和41年、私はテープの仕事はしておりませんし、フィリップスとの標準化契約の話なんか聞かれたら答えられません」「そうか。わかった」
T氏は昭和7年生まれ。私と10才違い。91才である。
T氏に電話をしたのは6月はじめである。7月6日の取材が待ち遠しかった。私もT氏も高齢である。二人ともそれまで倒れるわけにいかない。
取材は日本橋にあるTDK本社で行われた。26階の応接から銀座、晴海方面のビル街が見える。(写真)
「TDKもこんな立派なビルに住めるようになったのか」
T氏は感慨深げである。
私がT氏にお目にかかったのは1968年、TDKは神田の貸しビルだった。ビルの入り口で管理人の叔父さんが七輪でサンマを焼いていた。
カセットテープ草創期の生き証人T氏の記憶は確かだった。
テープメーカーだけでなく、レコーダメーカーも含めた業界の話が次々に飛び出し、取材記者も前のめりになった。


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