11月6日、龍ヶ崎ゲヴァントハウスのCDコンサートで、内田光子さんが弾くモーツアルトのピアノ協奏曲第20番を聴いた。1995年ベルリンフィルハーモニーで収録した放送ライヴである。第1楽章のカデンツィア(オケの伴奏を伴わないピアノ独奏部分)が凄かった。ダイナミックであり、威厳に満ちていた。巨匠の風格でる。
聴きながら50年前を思いだしていた。私は1970年、内田光子さんにお目にかかっている。しかもご自宅で……。(写真・中。1970年、木村伊兵衛氏撮影)
当時、私は録音テープの商品企画を担当していた。1969年、SDカセットテープ発売。SDは初の音楽用カセットという高い評価を受けた。SDに使用した磁性紛はオープンリール用に開発したものだが、オープンとしては高域特性が出過ぎて規格はずれだった。これをカセット用に転用したところ、高い評価を受けたのである。
私は規格はずれのSDオープンテープを聴いて素晴らしい音だと思った。確かに高域が強調されるが、耳障りではなく透明感がある。ということで1970年3月SDオープンを発売する。この年、第8回ショパンコンクールが開催され、内田光子さんが2位に入賞する。私は内田さんに是非、SDオープンの音を聴いていただきたいと思う。
内田さんのお宅にお邪魔した。通された部屋は洋風。そこに現れた内田さん。全て、私のような庶民とは異次元の雰囲気である。それもそのはず、お父様は西ドイツ大使などを務めた外交官。内田さんはウィーン音楽院でピアノを学んだ。「深窓の令嬢」とはこういう次元なのだと感じた。
ピアノを録音したSDオープンを再生すると内田さんの顔が輝いた。「まあ、面白い。音が飛び跳ねるようね」この年、内田さん22才、小生28才。
2021年、第18回ショパンコンクールで、反田恭平さんが2位に入賞。日本人として内田さんに次いで2人目、51年ぶりの2位入賞である。反田さんが内田さんのような世界的巨匠になる日が楽しみである。
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