1987年のローマ大会の時は、「お世話になります」という事で日本大使館を訪ね西田大使にご挨拶におうかがいした。広告代理店は「電通」さんである。営業の方にもお世話になったが、スポーツ・文化事業局の飯澤正さんにもお世話になった。
退職後も飯澤さんにはお世話になっている。小生が自分史を進呈したのに対して、毎年「日本モーム協会会誌"CAP FERRAT"」を送っていただいている。この協会は英国の作家サマセット・モーム(1874-1965)を記念して作られた協会である。
先日、飯澤さんに「恥ずかしいんだけど、私、モームの作品まだ読んだことないんだけど」と正直に打ち明けたところ「まず、”月と6ペンス”を読みなさい」という返事が返ってきた。
早速、牛久図書館に行き、同本を借り、読み始めた。実に面白い。翻訳者は中野好夫(1903-1985)だが、文章表現が巧みで翻訳物という事を忘れてしまう。この本に登場するのは画家であるが、私の想像を超えた画家の破天荒な生き方が描かれている。
今年74才になった私は、比較的恵まれた人生を送っていると思う。だが、最近、「人間の生きがいってなんだろう?」と迷いが生じる時もある。
モームの作品はこの迷いに示唆を与えてくれそうである。訳者の中野好夫は解説の中でこう述べている。「人間は彼自身にさえどうにも出来ない、複雑極まる矛盾の塊である。-略ーいわば永遠の謎なるものとして人間の魂を描くこと、これが彼の一生を通じて歌いつづけている唯一の主題であるといってよい」。
こう書くとモームの小説は哲学書のようだが、とんでもない。読みだしたら止められない面白い本なのである。 飯澤さん、ありがとう。
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