(写真、左から伊藤君、簾内君、畠山)
「日本ペンクラブ」という文壇組織がある。初代会長は島崎藤村。現・会長は浅田次郎である。会員である女流歌人、伊藤幸子さんから本が送られてきた。本のタイトルは「口ずさむとき」(出版社・コールサック社)。439頁。ズシリと重い。伊藤さんが平成19年から郷里の「盛岡タイムス」に連載した416のエッセーが収められている。筆者が感銘した短歌416作品を取り上げ、作品についての思いが語られる。そこに筆者の人生観、世界観が滲みでる。その見識の深さに圧倒される。小生は「人間浴」というブログを書いているが、素人が書くものと、プロが書くものとの違いに唖然としてしまう。
実は、伊藤幸子さんは小生の高校時代の友人の奥様である。
私は昭和35年、秋田県立鷹巣農林高校(現在・秋田北陽高校)林業科を卒業した。林業専攻なのに文科系の3人グループができた。グループ名をシロツメクサと言った。新聞部長の伊藤博、弁論部長の簾内隆一、文芸部長の小生、畠山である。
伊藤君は林業関係の会社に就職。幸子さんと結婚した。新婚時代の新居を訪れた。新居は福島県・浪江だった。ここで山林の管理を任されていた。山小屋風の新居での2人の笑い声と笑顔は脳裏に焼き付いている。
伊藤幸子さんは平成7年、自作の歌集「桜桃花」を出版されている。次の3作品は私の胸に突きささった。
「明けやらぬあしたにわが曳くリヤカーは重く軋みぬ死せる父乗せて」「機械油の匂い残れる夫の指みごもりしこと告げし夜に著(しる)く」「水底のごとき寂けさ誰もゐぬ生家の闇に覚めつつをれば」ご主人の伊藤博君は平成10年、57歳の若さで帰らぬ人となった。幸子さんの歌で伊藤君を偲ぶこの頃である。
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