2015年5月20日水曜日

マーケティング(商売)の本質


 先月、業界OB有志の集まりの時、元・日立マクセル・理事の工野正樹さんから一冊の本をいただいた。室井鉄衛/マーケティングの本質ーその源流と展開/自然塾編著/クリエー出版である。
 室井さんは工野さんのマーケティングの先生であり、工野さん自身この本に寄稿されている。

 マーケティング、いわゆる商売(経営)の本質とはなにか?これは私個人としても自問自答してきた課題である。それは、最近の企業の目的があまりにも利益に偏重しているのではないかという疑問である。企業の利益率を上げる為に、不採算部門のみか収益率の悪い部門を閉鎖したり売却する例が後を絶たない。利益率の高い企業が優良企業と言われ、株価も高い。しかし、企業の価値はそんなに単純なものではないはずである。
 室井さんは語る「企業の存在は、計数的には利益の表示によって表現されるが、その利益によって生まれる根源は、企業の存在と、その行動が市場からの容認と、顧客が得た期待と満足の評価の代償として与えられた結果なのである。企業の存在とは、社会において万人が認める行動として認められる結果であり、そこには自ら万人が感じ、理解し、容認する行動があるからである。人が信頼して生きる姿である。人間の行動としての経営、そこには自ら行為の倫理性が求められ、考えられ、実行されるものである。マーケティングという行為にも当然倫理性は求められるものである。倫理性とは人間の教養なのである」
 決算数字を良くする為に粉飾決算等が後を絶たない昨今、株価に企業の倫理性まで織り込まれたら、と思ったしだいである。

 室井さんは第1線を退いた後、2011年(平成23年)郷里、宇都宮で91才の生涯を終える。最晩年、宇都宮で書かれた、東京一極集中の弊害は「品格のある日本の国土と日本人の生活」を愛した室井さんならではの説得力がある。

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