14日、私が幹事をつとめるTDKパソコンクラブで岡本明さんのセミナーが開催された。テーマは「フェライト発明・TDK設立とその後の発展」。
岡本明さんにお目にかかったのは、昨年の4月26日である。その時のことは「白金台のセレブと工学博士」というタイトルでブログに書いた。そのご縁で今回のセミナーの開催となった。
14日のセミナーは参加者に強烈な印象を与えた。
TDKは磁性材料フェライトを工業化するために1935年設立された。フェライトは東京工業大学の加藤与五郎博士と武井武博士が発明した。フェライトは1939年、海軍の技術研究所で無線機の磁心として評価され、1943年には蒲田工場、平沢工場(秋田)が海軍の指定工場となった。無線機へのフェライトの応用は軍事機密であり、TDKのトップは戦争加担を隠すため、固く口を閉ざした。
フェライトはオランダのフィリップスも開発していた。東京工業大学は1930特許出願し、1932年登録されていたが、1940年フィリップスも特許出願。1954年TDKは無効審判の訴訟を起こす。1956年、不利とみたフィリップスは和解(クロスライセンス)を申し入れ、TDKは無効審判を取り下げる。
1992年、武井武死去。武井先生の一番弟子だった岡本さんは先生の貸金庫を開けて恩師の無念を知る。貸金庫の中にフェライトの発明はTDKだという証拠資料が入っていたのである。武井はフィリップスと妥協するのではなく、勝って欲しかったのである。
岡本さんは武井先生の無念を晴らすために、フェライトを2006年、IEEE(電子・電気で世界最大の団体)のマイルストーンに登録申請し、2009年、登録承認を勝ちとる。
IEEEのマイルストーンにはベルの電話の発明、エジソンの白熱電球の発明、マルコー二の無線電信の発明が登録されている。フェライトの発明はこれらに連なる大発明であり、TDK(加藤、武井両博士)の発明であることが認定されたのである。岡本さんは見事に恩師の無念を晴らす。
武井先生は生前、TDKの社訓は「夢・勇気・信頼」だが”執念”を付け加えたいと語っていたという、岡本さんは”執念”でIEEEのマイルストーンを勝ち取ったのである。
(写真はウィーン楽友協会・ブラームスザールでコントラバスを弾く岡本さん)
0 件のコメント:
コメントを投稿