1月の中旬でした。メールを見ると、「カセットテープについて、取材したいのですが、対応していただけますか?同じような話になるかもしれませんが・・・」とある。発信先を見ると、6年前にお目にかかった記者である。まだ、カセットテープは続いているのかと驚く反面、正直嬉しかった。81才になろうとしている自分がお役に立てるのである。こんな名誉なことはない。
私はTDKでカセットテープを含む記録メディアの商品企画を担当していた。2002年定年退職して21年になる。2007年にはTDKは記録メディア事業から撤退した。カセットテープ、VHSビデオテープといったアナログ記録メディアがCD、DVDというデジタル記録メディアに変わり、事業として旨味がなくなったからである。
しかし、カセットテープは生き残った。マクセルさんが作り続けている。CDにはない、カセットのモノ感覚、アナログの暖かい音を好むお客様が残っている。
そのような方のために、音楽出版が2016年「カセットテープ時代」という本を出版、2017年「カセットテープ時代part2」を出版。同年12月ネコ・パブリッシングが「カセットテープーコンプリートブック」を出版した。2022年には「ステレオ時代」が「TDKはこうして世界一になった」という32頁にわたるTDKカセットテープの特集企画を組んだ。その度に私の現役時代の話が掲載された。
今年になり、もうカセットテープの話はないだろうと思っていたのである。
25日、日本橋にある出版社に向かった。話によると、今回は同社が出版するのではなく大手の出版社が発売元で、同社は制作を依頼されたのだそうだ。3月末に発売されるという。カセットテープの話は出尽くしていると思うのだが、どんな本になるか楽しみだ。