2020年4月19日日曜日

クラシック音楽で開花したTDKの音楽事業

私の上司、沖山昭八さん(1933-2016)はいつも夢をみている人だった。家電メーカーの下請けに過ぎなかったTDKを世界企業TDKに育て上げた。この戦略はNHKの「プロジェクトⅩ」でも紹介された。沖山さんはTDK時代の終盤、レコード事業に夢を託した。これが失敗だった。以下、本人の回顧談である。「1959年、TDK入社以来20年以上、成功の歴史を刻んできた私は81年、さらに新たな仕事としてレコード事業に乗り出す。社長を命じられた私はTレコード会社から8名のベテラン幹部を迎え、華々しくTDKレコードをスタートさせた。事業計画として当初の3年間は赤字だが4年度から黒字化という計画を立てた。しかし、この目論は完全にはずれた。TDKで味わう初めての挫折だった」
 でも、沖山さん、その後があったのです。
 私は2000年、沖山さんが社長だったTDKコアに移籍。当時社長だった松本謙明さんにFM東京で放送していたクラシックライヴ「TDKオリジナルコンサート」のCD化を提案。これが大ヒット。後任としてクラシック音楽部門を引き継いだ岩垂靖樹さんは既存のレコード会社がまだ本格的に着手していなかったDVD部門に進出。2002年小澤征爾指揮ウィーンフルのニューイヤーコンサートは10万枚の大ヒットになった。その後ミラノスカラ座等のオペラ、アバド・ベルリンフィルによるベートーヴェン交響曲全集等のDVDをリリースした。そういえば岩垂さんはヨーロッパ時代ミラノスカラ座の歴史的な録音を永久保存するため、TDK製CDRに記録するという事業も行っている。(1997)ドミンゴが主役を演じる「オテロ」では自ら日本語訳を務めるというオペラ通でもある。
 なお、TDKは2008年、事業を電子部品に特化し、記録メディア関連事業から撤退した。
(写真は岩垂さんが商品化した、TDKレーベル・クラシックDVDの数々)

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