2019年10月18日金曜日

千年前に書かれた「源氏物語」


文藝評論家だけでなく音楽評論家としても名高いドナルド・キーン氏。キーン氏は日本が大好きだった。今年亡くなる前、日本国籍まで取得していた。そのキーン氏を日本の虜(とりこ)にしたのが「源氏物語」だった。
 キーン氏は18歳の時、ニューヨークのマンハッタンの書店で「源氏物語」に遭遇したという。アーサー・ウェイリーによる英訳版だった。
 ブログは書くがほとんど本を読まない小生だが、音楽評論家として尊敬していた米国生まれのキーン氏が「源氏物語」によって日本に目覚めたとあって、日本人である小生としても「源氏物語」とはどんなものか興味が沸いた。
 書店に行くと、豪華な装丁(クリムトの”接吻”をアレンジ?)の「源氏物語」が目に入った。(左右社・刊)ウェイリーの英訳版を和訳したものである。和→英→和である。これなら小生でも読めると思った。
 予想通りだった。平易である。面白い。男女間の心理描写、筋立ても見事である。ここで見落としてならないのは、登場人物の立ち振る舞いの繊細さであり、しなやかさである。キーン氏が魅了されたのはこの部分だった。西欧人であれば男女の間の会話もストレートであるが、源氏物語に登場する人物はどれも奥ゆかしい。
 能、歌舞伎、茶道等という日本の文化は1千年前に書かれた「源氏物語」、さらに「万葉集」時代から脈々と継承されたものだということが理解できる。
 「源氏物語」は紫式部が書いた。400字詰の原稿用紙で約2,400枚におよぶ長編。800首弱の和歌を含む王朝絵巻である。「世界最古の長編小説」とも言われている。全集を読み、味わうのは至難の業である。
 幸い時間はある。漫然とテレビのワイドショーに時間を費やすよりは先人の残した遺産に目配りをしたい。

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