私はTDKでカセットテープの商品企画を担当し、その後、広報を担当した。定年後、国立国会図書館に行き、昭和41年の電気業界日刊紙「電波新聞」を見て、不思議に思ったことがある。1966年7月にマクセルがカセットを発売したという記事や広告が見当たらない。広告ではTDKのシンクロカセットが9月でマクセルは10月だった。私はこの件について、マクセルOBの方に7月というのはOEM(相手先ブランド)ではないかと問い合せたが確たる返事はなかった。OEMであれば、TDKは6月に松下電器に納品しているのでTDKの方が早いことになる。
5月、衝撃のメールが入る。カセット業界の生き字引であるKさんから1966年9月16日付けの電波新聞が送信されてきた。この記事には「日立マクセルはかねてから商品化をすすめていたが、このほど生産体制も整ったので10月はじめからマクセルの商品名で発売する」とある。私の大先輩、富田哲夫さんは2023年11月25日発行の「ステレオ時代neo2」で”ブラドものも、OEMもTDKが業界初発売”と断言したが、それが裏付けられた。
広報活動は社内資料だけでなく、外部資料も精査して正確を期さないと、業界を混乱させるだけでなく、会社のイメージダウンになり、取材に協力した方々にも迷惑をかける。恐ろしい。
広報活動は社内資料だけでなく、外部資料も精査して正確を期さないと、業界を混乱させるだけでなく、会社のイメージダウンになり、取材に協力した方々にも迷惑をかける。恐ろしい。