「畠山さん、知ってるかな。私の部下だったMさん、彼女のお嬢さんが難病を患っていて、その手記を出版したいと言っているんだ。手伝ってやってくれないか」。Sさんの要請であればお断りするわけにいかない。「はい、やらせていただきます」
Mさんから、お嬢さんの手記や資料が送られてきた。驚いたことに腰を手術した時にできた30センチほどの手術痕の写真が添えられていた。出版を決意した背景には余ほどの事情があると思われた。
2月11日、お茶の水にある「山の上ホテル」でMさんとお嬢さんにお会いした。このホテル、川端康成、三島由紀夫、池波正太郎等の文人が愛用したホテルとして有名。明治大学に隣接、都心とは思えない静けさとアットホームな雰囲気。ホテルマンの接客姿勢が暖かい。コロナ禍というのにレストランは満席だった。
私は特に文才があるわけではない。並みである。医学的な知識は皆無である。私の利点といえば、並みだけに、文章がわかりやすいのではないかと自覚している。Sさんもそれを評価して下さったと思う。
Sさんに評価していただいたのも嬉しいが、79才(3月)になって、未来あるお嬢さんのお手伝いができるのはもっと嬉しい。お嬢さんに名刺を差し上げたら、手書きでメールアドレスと携帯電話の番号を書いてくれた。