2017年2月4日土曜日

想像を絶するNHK音楽放送プロデューサーの挑戦


 先月、元NHK音楽プロデューサーの竹森道夫さんにお目にかかった。竹森さんと学生時代懇意にしていたという弟が東京駅の居酒屋をセッティングした。竹森さんは凄い方だと思った。翌日、弟に「竹森さんは日本の宝だ」というメールを送信した。竹森さんは、私にそういうオーラを感じさせたのだった。そのオーラのバックグラウンドが次第に明らかになる。

 竹森さんは、「DVDの音の方がCDより音がいい場合がある」とおっしゃっていたのを思い出した。
自宅のCD、DVDのライブラリーを探すと、ゲルギエフがウィーンフィルを指揮したDVD(2000年ザルツブルグ音楽祭)があったので、オーディオ出力をオーディオ装置につないで聴いてみた。CDやFM放送では聴いた事がないような鮮烈な音だった。ケース裏面に表示されている音声仕様を見ると、「リニアPCM 48khz/16bit」とある。CDを上回る仕様である。DVDは映像に容量を取られるから音声はCDと同等以下だろうと思っていた私には衝撃だった。

 竹森さんから、NHK音楽プロデューサー時代のエピソードを書いた資料をいただいた。特にその中で驚いたのは「衛星時代の洋楽放送」に書かれた”ハイビジョンによる『ニュルンベルグの指輪』”だった。『ニュルンベルグの指輪』とはワーグナーが作曲した楽劇で上演は4夜15時間にわたる。1989年この楽劇がミュンヘンで上演された。この収録にNHKは挑戦する。機材はハイビジョン、世界初だった。
 音楽監督はサバリッシュ、演出家レーンホフとの綿密な連携、機材のセッティング、収録時の事故への対応、終わってからの編集。スタッフは連日徹夜の連続。ディレクターが救急車で運ばれるという一幕もあったという。収録された作品はイギリスのグラモフォン賞はじめ数多くの賞を受賞。
 竹森さんのオーラの陰には、このような想像を絶する苦労があった。竹森さんは音楽ファンの宝である。

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