2006年、音楽評論家の吉田秀和が文化勲章を受賞した。
その時、作曲家でもない、演奏家でもない、評論家畑の人がなぜ文化勲章なのかと腑におちなかった。私からすると、音楽で一番偉いのは作曲家で、二番目は演奏家、ズーと離れて評論家という位置づけなのである。
そういう、私だから、楽譜は読めない、楽器は演奏できない、聴くのが好きだけの自分は肩身が狭かった。
今月発売された「レコード芸術」7月号は吉田秀和特集である。
これを読んで、評論家も作曲家や演奏家と肩を並べる存在なのだ、と思った。というか、吉田秀和の対談を読んで、そう思わされた。そうして、自分もこれからは自信を持って、居並ぶ作曲家、演奏家のことを語ろうと思った。
吉田秀和は朝日新聞にも「音楽展望」を連載しているが、文章がやさしい、そして、表現にツヤがある・色っぽい、視点が広い。音楽ファンならずとも引き込まれてしまう。
最後に「レコード芸術・吉田秀和特集」から一部を引用しよう。
●僕はこの二人(中原中也、吉田一穂)から、決定的なことを学びました。それは勤めたりしないで、好きなことをして、ごろごろしていてもー少々語弊があるけれどー成り立つ生活があるということです。
●岩波というところは、ご承知の通り誰も読めないような変な哲学書だっていいんです。東大出であれば(笑)。
●之を知る者は之を好む者に如かず。之を好む者は之を楽しむ者に如かず。