2020年11月8日日曜日

神田のサンマとニューヨークの青空


 書店で新刊コーナーを見ていたら、帯にカセットテープの写真が載っている。オーディオ関連の本かと思って手にとったら、表紙に少年の顔。な、なんだ、タイトルは「神田のサンマとニューヨークの青空」ときた、どういうジャンルの本かわからなくなってきた。
 筆者を見て、そうか、そうなんだ!と思った。TDK元会長、澤部肇とある。澤部さんは78才になった今でも少年のような顔をしている。表紙は澤部さんの顔をイメージしたものなんだと納得がいく。本を読んで、タイトルの意味が分かってくる。
 澤部さんが入社した頃(1964)、TDKは中小企業だった。神田の日立別館というビルが本社だった。社員通用口に守衛所があった。老夫婦が住み込みで働いていた。夕方になるとおばさんが七輪にサンマをあげ、パタパタとサンマを焼いていた。
 そのTDKがカセットテープで世界制覇を成し遂げたこともあり、日本経済新聞社の優良企業ランキングで第2位となる(1979)。1982年、ニューヨーク証券取引所に上場。ニューヨークの青空にTDKの社旗が翻る。この時、澤部さんは社長室企画課長として三代目社長・素野福次郎とともに社旗を仰ぎみる。
 読みだすととまらない、「秋田での研修でふるさとに出会う」「”あほはいらん”と言われた玉川事業部」「岩谷さんの千本ノック」「日曜の大歳学校でマネジメントのイロハを教わる」「デミング賞の受審をやめさせた素野さん」「社長の名代として大先輩と対決」「ストライキの前夜、青山で焼き肉を食べていた」「いつも開いていた役員室のドア」「俺はこの人を幸せにできるだろうか」「本社はこれからはニューヨークやな」「”お庭番”扱いで苦労したテープ事業部」「後味が悪かった電池会社買収」「ないないづくしでルクセンブルグヘ」「ロシア債で多額の損失、頭が真っ白に」「ITバブル崩壊、ワークシェアかリストラか」「”できっこない”と鼻で笑われる」「宝くじに当たったATL」「能力の限界、社長を退く」「他流試合、社外役員で鍛えられる」「投資家との付き合いから多くを学ぶ」
 澤部さん、現在、在東京ルクセンブルク大公国名誉総領事、荏原製作所社外取締役、早稲田大学評議会会長。私も澤部さんと同じ1942年生まれでTDK・OBだが、地元老人会副会長の私とは大分立場が違う。が、お目にかかると少年のような微笑みで暖かく接してくれる。


1 件のコメント:

  1. 朝晩寒くなりコロナも増えて来ましたがお元気そうで何よりです!来月のゴルフ楽しみです!何時も話題の豊富なブログ毎回楽しみにしております。ありがとう!

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