2018年2月16日金曜日

芥川賞受賞作「おらおらでひとりいぐも」


家内が珍しく本を買ってきた。

 第158回芥川賞受賞作「おらおらでひとりいぐも」
作者は若竹千佐子(わかたけちさこ)。1954年、岩手県遠野市生れ。岩手大学教育学部卒業。現在、主婦。
 
 主人公、桃子さんは24歳の秋、東京オリンピックのファンファーレに押し出されるように故郷を飛び出す。身ひとつで上野駅に降り立ってから50年。住み込みのアルバイト、周造との出会いと結婚、2児の誕生と成長、そして夫の死。「この先一人でどやって暮らす。こまったあどうすんべえ」
 芥川賞といえば仰々しいが、この本東北弁で書かれており、秋田生れ、初老のわれわれ夫婦には懐かしくもあり、切実でもある。

 「周造、どごさ、逝った、おらを残して」「神も仏もあるもんでね、かえせじゃ、もどせじゃ」「老いるということは結局のところ、負けを承知の戦(いくさ)のようなものではないか」「現実のどこかに、きっと針の穴ほどの破れ目がり、そこに今あの人が住む世界への通路が開かれている」「死は恐れでなく解放なんだなす」「おらおらでひとりでいぐも」

 家内も醒めた女であり、オレが先に死んでも「ひとりでいぐも」で心配ない。家内に先に死なれた場合、オレも「ひとりでいぐも」。食事の世話と下の世話はAI(人工知能)ロボットがやってくれっぺ。

 物語の最後、桃子さんは、古里の八角山に思いを馳せ、孫のさやちゃんに春の匂いを香ぐ。

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