2013年2月22日金曜日

87才の新人女流作家

(中村さんの作品が掲載される「いしぶみ」7号。現在編集作業中)

 芥川賞では75才の黒田夏子さんが受賞して話題を集めている。

 わが町の文芸誌「いしぶみ」には87才の女流作家が登場した。
中村たかさんである。
 中村さんは本所区業平橋1丁目8番地、東京スカイツリーの目の前で生まれ、育ったという。
中村さんは幼少の頃の記憶を辿る。当時、ツリーのあるところには東武鉄道の引き込み線があり、蒸気機関車が「ポーッ」と汽笛を鳴らし、黒煙を吐いていた。
 街並みには果物屋、鳥越せんべい屋、割烹、床屋、本屋、雑貨屋、糸屋、足袋屋、髪結いなどが並ぶ。因みに中村さんの家は銚子屋という焼き豆腐屋だった。
 昭和20年、中村さん19才の時の体験が生ナマしい。米軍の爆撃機B29が飛来、業平橋近辺は地獄と化す。隅田川にかかる橋に逃げ惑う人々が殺到し、橋はもろくも崩れる。「昭和の地獄橋」といわれたという。
 現在「東京スカイツリー」は観光名所として華々しが、中村さんの作品で業平橋近辺の過去の痛ましい惨劇があぶりだされる。

 「いしぶみ」7号の編集作業をしながら、私は「文藝に円熟はあるが、老いはない」と感じた。
「いしぶみ」の会員のほとんどは70代、80代であり、どの作品にも豊かな人生経験が込められている。

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