24日朝、新聞を見て驚いた。
「”長崎施設火災、リコール加湿器火元”」という記事が掲載されている。この加湿器、昔小生が勤務していた会社のものである。新聞と平行して社長自ら記者会見する姿もテレビで放映された。
起こってしまったことは、仕方がないが、率直に実情を説明し、お詫びをする会社の姿勢は納得できた。二代目社長・山﨑貞一氏は”悪は急げ!”という社訓を残した。その伝統が生きていると思った。 世に「善は急げ!」という教えはあるが「悪は急げ!」は真逆である。しかし、自分にとって都合の悪いところは率先して打ち明け、率直に詫び、反省せよとの訓えは正鵠をえている。
会社の歴史を振りかえってみると、飛躍に結びついた製品が三つある。昭和20~40年代の磁性材料フェライト、昭和40~60年代の録音テープ、平成時代のHDD用ヘッドである。いずれも業界NO,1の商品である。
フェライト事業部を率いた小松正一氏は”物の勝負”を事業部の方針とした。なにをおいても、メーカーにとっては商品力が大事だという考えである。
録音テープ事業を推進したのは高尾三郎氏である。高尾さんは技術者ではないが、文藝に秀でており、市川左団次翁とも交流があり、自ら小唄を唄い、歌舞伎座にも出演した。録音テープはお稽古ごとにとって、不可欠の道具である。TDKが磁性材料メーカーであるという特性を生かして録音テープを開発。それがカセットテープで花開く。磁気テープ工業会の会長にも就任する。
HDDヘッド事業も磁性というオリジナル技術を生かした商品である。
加湿器の事故は誠に残念であるが、これを機会に会社の設立の原点「創造」に立ち返り、第四の業界NO,1の商品を育て社会に貢献して欲しい。それがOBである小生の願いであり、火災で亡くなられた方への供養だと思う。