2018年10月12日金曜日
芸術祭大賞受賞「武満徹・カトレーン」秘話
隣町にある音楽グループ「龍ヶ崎ゲヴァントハウス」のお手伝いをしている。
1年に1~2回、現役の頃お世話になったオーディオ、音楽関係の方を講師としてお招きする。来年の講師として、音楽評論家の東条碩夫先生に連絡したところ「お引き受けします」というご返事をいただいた。
改めて、東条先生が主筆を務められた「伝説のクラシックライヴ」(TOKYO FM出版)を読み直してみた。″《カトレーン》顛末記″を読んで息が詰まった。1975年、東条先生はFM東京の音楽プロデューサーだった。この時、文化庁芸術祭参加作品に応募する決意をする。世界的な名声を博していた武満徹(1930~1996)に新作を依頼する。
軽井沢の別荘に新作の譜面をとりに深夜タクシーで向かう。「(運転手が)とてつもない悲鳴を上げた。窓の外を見ると、白いシャツを着た武満さんが幽霊のごとく立っているではないか。げっそりと痩せ、ぼうぼうと伸びたざんばらの髪と無精髭に覆われた顔の中に目だけがギョロギョロとひかり・・・」。でき上ったばかりの譜面の前で奥様が語る。「この人、もう、1ヶ月以上座ったきりで全然運動してないでしょう。心臓麻痺でも起こして、(これが)遺作になるかと思ったわよ」
武満が精魂を込めて書き上げた作品「カトレーン」は小澤征爾指揮・新日本フィルとスーパー室内楽団″タッシ″(Vn,Vc,Cl,Pf)によって初演され、見事に芸術祭大賞を受賞する。
「カトレーン(Quatrain)」。16分余の作品。日本人である武満でないと書けない神秘的な作品である。
東条先生が「カトレーン」をテーマに語って下さるかどうかはわからないが、できれば取り上げていただきたい。神秘的なこの曲がゲヴァントハウスの音響装置でどう響くか・・・。聴いてみたい。
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